2009年8月9日日曜日

旧体制と大革命


◆アレクシス・ド・トクヴィル著/小山勉訳 『旧体制と大革命』(1998,ちくま学芸文庫)

『アメリカのデモクラシー』で有名なトクヴィル(1805-59) 晩年の「フランス革命に関する研究書」。1789年の革命に至る旧体制を分析した部分のみが生前に出版され、フランス革命そのものを取り上げる続編は研究ノートが残されただけで未完。この訳書は生前出版された部分の訳で、「1789年以前と以後におけるフランスの社会・政治状態」という著者30歳ごろの短い論文を併録している。

全体は「序文」プラス全3部(プラス「補遺」)の構成になっているが、論が向かっている方向に着目すると、「フランスの中央集権体制は革命によって突如出現したものではなく、封建的社会体制から中央集権制への移行は旧体制においてほとんど完成していた」と主張する前半と、「旧体制はどのような点において1789年の革命を準備したか」をテーマとする後半とに、(第2部第7章あたりで)分けることができるだろう。

封建制から中央集権制への流れは貴族における自由の喪失に、旧体制から革命への流れは平民における平等の要求に重ねられ、自由と隷従、平等と特権が歴史の中で運命劇さながら絡み合い、大革命へと流れ込もうとする。

通説にとらわれずに往時の史料を読み込み、それぞれの階級が置かれた位置を的確に把握する手腕はみごとで、たとえば、267ページ以下の聖職者階級の描写など、シェイクスピア的な共感の才を感じさせる。

もっと知恵がついてからまた読み返したい。『アメリカのデモクラシー』も読もう。

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