2009年10月14日水曜日
〈象徴形式〉としての遠近法
◆ E. パノフスキー 著 / 木田元 監訳 / 川戸れい子 上村清雄 訳 『〈象徴形式〉としての遠近法』 (2009,ちくま学芸文庫)
本文が70ページあまりなのに対して注が110ページ超というちょっと珍しいボリューム比。更に30数ページの図版。原著は1924-25年に発表されている。
「古代から近代までの絵画などにおける遠近法のありようから、それぞれの時代の人々にとっての世界像が読み取れるよ」という話で、「近代人は三次元の座標軸によって体系化される空間をあたりまえのものと思っているけど、それが完成されるルネサンス以前はそうではなかったんだ」という主張が、大変な学殖によって具体化される。
それだけなら「そうかもしれないけど、そうじゃないかもしれないね」ということになるのだが、パノフスキーのすごいところは、われわれにとって自明な中心遠近法が現実をありのままに表すものではない(目は2つあるし、網膜は球面であるから)ことを、初っ端の第1章でのテクニカルな議論によって明快に示している点である。
続編として 「〈象徴形式〉としての対位法」「〈象徴形式〉としての写生」 「〈象徴形式〉としての句読法」などもぜひ残してほしかった。
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